干支(えと)とは?十二支・十干・六十干支の基礎
干支の定義から六十干支一覧表、陰陽道・暦注・鬼門との関係まで、文化史を含めて体系的に解説
はじめに
「今年は辰年(たつどし)」「自分は寅年(とらどし)」のように、干支(えと)は日本の生活の中で当たり前に登場します。
ただし干支は本来、十二支(じゅうにし)だけではなく、十干(じっかん)と十二支を組み合わせた体系であり、暦や文化史の文脈では「60通り(六十干支)」まで含めて理解すると全体像がつながります。
干支の定義
干支(えと)= 十干(10)+ 十二支(12)の組み合わせ
干支(えと)は、十干(甲・乙・丙・丁…)と十二支(子・丑・寅・卯…) を組み合わせたものです。十干と十二支の組み合わせは60通りあり、これを 六十干支(ろくじっかんし) と呼びます。
「干支」と「十二支」のズレ(現代の会話)
現代の日常会話で「干支」と言う場合、十干を省略して十二支(動物の干支)だけを指すことが多いという実態があります。
要点
1) 十干・十二支は「元の役割」が違う
- 十干:もともと日を10日単位で数えるための符号として用いられた
- 十二支:もともと12か月の順を表す呼び名だった
2) 読み方は「音読み」と「訓読み」の2レイヤー
十干・十二支・六十干支には、音読み(こう/おつ…、し/ちゅう…) と、訓読み(きのえ/きのと…、ね/うし…) が併存します。
3) 六十干支は暦注や吉凶判断とも結びついた
暦(カレンダー)には、月日や曜日だけでなく、選日(せんじつ)や方位などの吉凶を示す情報が書かれてきました。暦注の多くが陰陽五行説や易に由来し、その大きな柱が干支です。
用語の比較(混同しやすい)
| 用語 | 何を指す? | 例 | 生活での登場 |
|---|---|---|---|
| 十二支(じゅうにし) | 12の支(動物イメージを伴う) | 子・丑・寅… | 正月・年賀状などで頻出 |
| 干支(えと/かんし) | 十干十二支(60通り)を含む概念(ただし会話では十二支だけを指しがち) | 甲子・丙午…/「辰年」 | 用法が混ざりやすい |
| 六十干支(ろくじっかんし) | 十干×十二支の60通りの組み合わせ | 甲子〜癸亥 | 暦・歴史・占いで出やすい |
※「干支」は日本では「えと」と呼ぶ一方、学術的・辞書的には「干支(かんし)」として説明されることもあります。
十干(じっかん)一覧
| # | 漢字 | 音読み | 訓読み |
|---|---|---|---|
| 1 | 甲 | こう | きのえ |
| 2 | 乙 | おつ | きのと |
| 3 | 丙 | へい | ひのえ |
| 4 | 丁 | てい | ひのと |
| 5 | 戊 | ぼ | つちのえ |
| 6 | 己 | き | つちのと |
| 7 | 庚 | こう | かのえ |
| 8 | 辛 | しん | かのと |
| 9 | 壬 | じん | みずのえ |
| 10 | 癸 | き | みずのと |
十二支(じゅうにし)一覧
| # | 漢字 | 音読み | 訓読み | 動物 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 子 | し | ね | 鼠 |
| 2 | 丑 | ちゅう | うし | 牛 |
| 3 | 寅 | いん | とら | 虎 |
| 4 | 卯 | ぼう | う | 兎 |
| 5 | 辰 | しん | たつ | 龍 |
| 6 | 巳 | し | み | 蛇 |
| 7 | 午 | ご | うま | 馬 |
| 8 | 未 | び | ひつじ | 羊 |
| 9 | 申 | しん | さる | 猿 |
| 10 | 酉 | ゆう | とり | 鶏 |
| 11 | 戌 | じゅつ | いぬ | 犬 |
| 12 | 亥 | がい | い | 猪 |
六十干支(ろくじっかんし)一覧表
※読みは文献・業界で揺れる場合があります(例:甲子の別読みなど)
| # | 六十干支 | 音読み | 訓読み |
|---|---|---|---|
| 1 | 甲子 | こうし | きのえね |
| 2 | 乙丑 | いっちゅう | きのとうし |
| 3 | 丙寅 | へいいん | ひのえとら |
| 4 | 丁卯 | ていぼう | ひのとう |
| 5 | 戊辰 | ぼしん | つちのえたつ |
| 6 | 己巳 | きし | つちのとみ |
| 7 | 庚午 | こうご | かのえうま |
| 8 | 辛未 | しんび | かのとひつじ |
| 9 | 壬申 | じんしん | みずのえさる |
| 10 | 癸酉 | きゆう | みずのととり |
| 11 | 甲戌 | こうじゅつ | きのえいぬ |
| 12 | 乙亥 | いつがい | きのとい |
| 13 | 丙子 | へいし | ひのえね |
| 14 | 丁丑 | ていちゅう | ひのとうし |
| 15 | 戊寅 | ぼいん | つちのえとら |
| 16 | 己卯 | きぼう | つちのとう |
| 17 | 庚辰 | こうしん | かのえたつ |
| 18 | 辛巳 | しんし | かのとみ |
| 19 | 壬午 | じんご | みずのえうま |
| 20 | 癸未 | きび | みずのとひつじ |
| 21 | 甲申 | こうしん | きのえさる |
| 22 | 乙酉 | いつゆう | きのととり |
| 23 | 丙戌 | へいじゅつ | ひのえいぬ |
| 24 | 丁亥 | ていがい | ひのとい |
| 25 | 戊子 | ぼし | つちのえね |
| 26 | 己丑 | きちゅう | つちのとうし |
| 27 | 庚寅 | こういん | かのえとら |
| 28 | 辛卯 | しんぼう | かのとう |
| 29 | 壬辰 | じんしん | みずのえたつ |
| 30 | 癸巳 | きし | みずのとみ |
| 31 | 甲午 | こうご | きのえうま |
| 32 | 乙未 | いつび | きのとひつじ |
| 33 | 丙申 | へいしん | ひのえさる |
| 34 | 丁酉 | ていゆう | ひのととり |
| 35 | 戊戌 | ぼじゅつ | つちのえいぬ |
| 36 | 己亥 | きがい | つちのとい |
| 37 | 庚子 | こうし | かのえね |
| 38 | 辛丑 | しんちゅう | かのとうし |
| 39 | 壬寅 | じんいん | みずのえとら |
| 40 | 癸卯 | きぼう | みずのとう |
| 41 | 甲辰 | こうしん | きのえたつ |
| 42 | 乙巳 | いつし | きのとみ |
| 43 | 丙午 | へいご | ひのえうま |
| 44 | 丁未 | ていび | ひのとひつじ |
| 45 | 戊申 | ぼしん | つちのえさる |
| 46 | 己酉 | きゆう | つちのととり |
| 47 | 庚戌 | こうじゅつ | かのえいぬ |
| 48 | 辛亥 | しんがい | かのとい |
| 49 | 壬子 | じんし | みずのえね |
| 50 | 癸丑 | きちゅう | みずのとうし |
| 51 | 甲寅 | こういん | きのえとら |
| 52 | 乙卯 | いつぼう | きのとう |
| 53 | 丙辰 | へいしん | ひのえたつ |
| 54 | 丁巳 | ていし | ひのとみ |
| 55 | 戊午 | ぼご | つちのえうま |
| 56 | 己未 | きび | つちのとひつじ |
| 57 | 庚申 | こうしん | かのえさる |
| 58 | 辛酉 | しんゆう | かのととり |
| 59 | 壬戌 | じんじゅつ | みずのえいぬ |
| 60 | 癸亥 | きがい | みずのとい |
文化史:陰陽道・暦注と干支の関係
陰陽道(おんみょうどう)は「暦・天文・吉凶」と深く結びつく
陰陽道は陰陽五行説に基づき、天文・暦数をつかさどって吉凶を占うことを目的とした学問/学派です。暦注の多くが陰陽五行説や易に由来し、月日と結びついています。
暦注(れきちゅう)とは何か
暦注は、古い暦の日付の下に付された注記で、中段には十二直、下段には日の吉凶に関する事項などを記すのが慣例でした。
六曜が広まる前から、暦には選日(せんじつ)として日々の吉凶が書かれ、その多くが干支の組み合わせで判断されていました。
「甲子」「庚申」など、干支そのものが"日柄"として機能した例
- 庚申(こうしん):「庚申待ち」が行われた
- 甲子(かっし/こうし/きのえね):吉とされ、「甲子祭」や「甲子待ち」が行われた
六十干支が暦注・民間習俗に入り込んだ具体例です。
暦づくりの現場でも「暦注」は重要だった
江戸期には、幕府の天文方が暦の計算を行い、賀茂氏系統を受け継いだ幸徳井(こうとくい)家が暦注を付け加え、各地から暦が出版されました。
「暦=天文計算」だけでなく、「暦注=吉凶・選日・方位」まで含めて社会実装されていたことが分かります。
文化史:丑寅(うしとら)=鬼門、方位と干支
十二支は「方角」を表す記号としても使われた
方位を北から時計回りに子・丑・寅…で12等分し、日本では以下のように呼んでいました:
| 方位 | 十二支 | 読み |
|---|---|---|
| 北東 | 丑寅 | うしとら |
| 東南 | 辰巳 | たつみ |
| 南西 | 未申 | ひつじさる |
| 西北 | 戌亥 | いぬい |
陰陽家(陰陽師)は、方位の吉凶を司る方位神(ほういじん)を祭り、「今年はこの方向に嫁に行ってはいけない」といった判断を暦の上に記していたとされます。
鬼門(きもん)とは(丑寅/艮=北東)
鬼門は陰陽道で最も悪いとされる丑寅(うしとら)(艮)=北東を指し、反対の未申(ひつじさる)(坤)=南西を裏鬼門とします。
※鬼門・方位の吉凶は、現代の科学的根拠というより文化史・信仰・習俗として理解するのが適切です。
まとめ
- 干支は本来、十干+十二支=六十干支(60通り)の体系
- ただし現代の会話では「干支=十二支(動物)」として語られがち
- 暦注・陰陽道の文脈では、干支(特に六十干支)が日柄・方位・吉凶と結びついて社会に実装されてきた
- 「丑寅=鬼門」などは、その代表的な文化的用例